ワンちゃんの鼠径ヘルニアとは？どんな病気？
犬のそけいヘルニアは、腹壁の筋肉や組織の弱点によって内臓が鼠径管（そけいかん）から脱出する病気です。そけいヘルニアは一般的に、腹圧が高まることで内臓が腹壁の弱点を通過しやすくなります。犬の場合、この状態は腹膜や腸、子宮などがそけいヘルニアを通って腹壁の外側に突出することを意味します。
【症状】
隙間が大きい場合、腸閉塞の症状が引き起こされる可能性があります。これは、ヘルニア部分が膨れている以外には無症状の場合もありますが、隙間が大きいと、ヘルニア内に小腸などが入り込んでしまい、腸の動きが悪くなります。腸閉塞の症状には、嘔吐、下痢、便秘、元気や食欲の低下などが含まれます。時には、腸が絞扼（こうやく：しめつけられること）され、ヘルニア部分の色が赤くなったり、熱をもったりすることもあります。このような状況では、ヘルニア部分を押しても元に戻らず、痛みを示すこともあります。また、妊娠時や子宮蓄膿症の場合、子宮が飛び出すこともあります。
【原因】
そけいヘルニアは、先天的な原因や事故などの外傷、または腹圧の上昇によって引き起こされることがあります。鼠径ヘルニアの原因は、生まれつきのもの（先天性）と後から起こったもの（後天性）に分類されます。
先天性
生まれつき穴が開いている状態です。原因は不明ですが、特定の犬種がかかりやすいことや、潜在精巣（精巣が陰嚢に下降せずにおなかの中にある状態）の場合に発症しやすいという報告があります。遺伝が関与している可能性が考えられます。
後天性
交通事故などで体壁が破損したことで起こる外傷性と、高齢によって体壁が弱くなることで起こる非外傷性があります。妊娠、重い労働、肥満などは腹圧を増加させ、ヘルニアの発症を促す要因となります。後天性のヘルニアの場合でも、生まれつき鼠径部に異常がある可能性が考えられます。
特に注意が必要な犬種や年齢は、すべての犬種や年齢で発生する可能性がありますが、特定の犬種や年齢層で発生しやすい傾向があります。かかりやすい犬種には、ペキニーズ、ゴールデン・レトリーバー、コッカー・スパニエル、ダックスフンド、バセンジーなどが挙げられます。また、先天性のヘルニアは若齢の男性犬に、後天性のヘルニアは中年齢の女性犬に多く見られます。
【治療】
そけいヘルニアの治療には、以下のような方法があります：
経過観察： ヘルニアが小さければ、定期的な経過観察が行われる場合もあります。しかし、妊娠や過度の肥満によってヘルニアが拡大する可能性があるため、注意が必要です。
外科手術： 腸や子宮、膀胱などの腹腔内臓器がヘルニア内にはまり込んでいる場合は、外科手術が必要となります。外科手術によってヘルニア部分が修復され、内臓が正しい位置に戻されます。
【予防】
そけいヘルニアの予防は難しいため、早期発見と早期治療が重要です。足の付け根付近に異常なしこりや膨らみがあれば、そけいヘルニアの可能性があるため、動物病院で検査を受けることをおすすめします。早期の治療が合併症のリスクを軽減し、犬の健康を維持する上で重要です。
自然に治る事はある？
そけいヘルニアが自然に治ることは、特に成犬の場合は稀ですが、子犬の場合は成長に伴って自然に穴がふさがることがあります。子犬のそけいヘルニアは、発症した穴が成長に伴って狭くなり、時には完全に閉じることがあります。このような場合、外科手術を行わずにヘルニアが解消されることがあります。
ただし、すべての子犬の場合がそうであるわけではありません。ヘルニアが大きく、または合併症がある場合は、手術が必要となることがあります。したがって、獣医師の指示に従い、適切な治療方法を検討することが重要です。
手術の場合、費用はどれくらいかかる？
そけいヘルニアの手術費用は、様々な要因によって異なります。病院の価格設定や手術の複雑さ、地域による価格差、犬の体重や年齢などがその要因です。一般的に、手術前の血液検査や手術代を含めると、40,000円から100,000円程度の範囲で費用がかかることがあります。ただし、嵌頓ヘルニアなどの合併症がある場合や手術が複雑な場合は、費用が高くなることがあります。その場合、手術費用は100,000円から200,000円程度になることもあります。
また、手術は避妊・去勢手術と同時に行うことができる場合があります。このような場合、手術費用に避妊・去勢手術の費用が追加されることがありますが、一部の獣医師はヘルニア修復手術を行う際に同時に避妊・去勢手術を行うことを推奨する場合があります。
そけいヘルニアを悪化させないためには、以下のような対策が考えられます：
体重管理： 肥満は腹圧を増加させ、そけいヘルニアの悪化を促す要因となります。犬の体重を適切に管理し、適度な運動やバランスの取れた食事を提供することが重要です。
妊娠への対応： 妊娠を考えている場合、そけいヘルニアの手術を検討することが重要です。妊娠期間中の腹圧の増加によって、ヘルニアが悪化する可能性があります。手術を先に行うことで、妊娠中にヘルニアが悪化するリスクを軽減できます。
適切な管理と注意： 軽度のそけいヘルニアの場合、獣医師の指示に従い、定期的な経過観察を行うことが重要です。そけいヘルニアの症状や悪化の兆候に注意し、必要に応じて獣医師の診察を受けるようにしましょう。
適切な運動： 過度な負荷をかけない適切な運動を提供することで、腹圧を適切に管理し、ヘルニアの悪化を防ぐことができます。運動は犬の健康維持に重要ですが、ヘルニアの状態に合わせて適切な運動を行うようにしましょう。
まとめ
犬のそけいヘルニアは、お腹の中から腸や膀胱などが出てしまうことがあり、場合によっては緊急手術が必要になることもあります。普段のスキンシップの中で、お腹の鼠径部に腫れや違和感がないかをチェックすることが大切です。もし何か異常を感じたら、早めに動物病院に相談して、愛犬の健康を守りましょう。
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