ペットを入店可にしようと思ったきっかけがあれば教えてください。
麗奈店長:私たちにとってペットは家族であり、ペットを店内に入れるのは当たり前のことだと考えていました。開店当初、寒さで真っ赤な手をしたお客様がワンちゃんと一緒に来店されて「ここはペットも入れるんですね、よかった」と店内で寛ぐ様子を見て、喜んでもらえたことは嬉しかったのですが、ペットが入れる飲食店の少なさに疑問を抱きました。
ペットや人間とか関係なく誰もがくつろげる平和な空間を提供したいという思いがありましたね。
鈴木社長:当店は施工会社として、店内には光触媒による抗菌・抗ウイルス塗装を施しています。コロナ禍で衛生面に対する意識が高まる中、テーブルや壁などにこの塗装を施すことで、ウイルスや匂いを分解し、安心してご利用いただける環境を整えています。また、ペットをお連れになるお客様へのお願いとして「他のお客様がいるときはリードをしてください」「容器はペット専用のものを使用してください」といった簡単なルールを定めています。皆さん気をつけてくださっているので、どなたでも安心して過ごしていただけると思います。
このお店の名前が「BELLE&EMMA」になった由来をお聞かせください。
麗奈店長:BELLE&EMMAはカラーテクノ株式会社という総合建築業の会社から誕生したのですが、そこに「エマちゃん」っていう女の子とそのペットの「ベル」というイメージキャラクターがいるんですよね。エマちゃんは縁起が良さそうなので神社の絵馬から、ベルは創立者の苗字である鈴木から名付けられています。
その子たちのいるカフェとして「人と動物が共存できる空間」が当店のテーマになっているため、「BELLE&EMMA」という名前にしました。最近は「ベルエマさん」とか「B&Mさん」と呼んでくださる方もいて、すごく愛されているなと感じます。
お客様にもよく聞かれるので、由来を入り口の黒板に書いてみたところたくさんの方に共感していただけて、いかに世界中の皆さんが動物に対しての壁がないかを実感しました。海外の方から「自分の国では、子供はNGだけどペットはOKという飲食店が多い」という話を伺ったこともあります。国ごとの違いを知って驚きました。
また、うちのメニューは日本語と英語の両方で表示しています。さらに、英語が得意なスタッフが1人いて、海外のお客様への対応は主にそのスタッフが中心に行っています。ただ、全員が簡単な接客英語での対応はできるようにしています。流暢に話せるのは1人だけですが、対応していく中で自然と英語を覚えていくスタッフも多いですね。
リピートするお客様の割合はどのくらいでしょうか。
麗奈店長:毎週新規のお客様がいらっしゃる一方で、ありがたいことに常連率も高いです。一度来てくださったお客様のほとんどが2回目、3回目とリピートしてくださいます。偶然当店を見つけて来店された方が、1~2週間後にまた来店してくださった時は震え上がるほど嬉しかったですね。
私の趣味の一環で、ペットちゃんの写真を撮ってそのデータを無料でプレゼントしています。新しい子を迎えたときや、成長したとき、または新しい服を買ったときなどに「写真を撮ってほしい」と再来店される方もいて、それが常連につながる理由の一つだと感じています。
私は元々デザインや写真補正の仕事をしていたこともあって、撮った写真は必ず補正してからお渡ししています。少しお時間はかかりますが、それも喜んでいただけているのかなと思いますね。
ペット連れのお客様とどのようにコミュニケーションを取っているのか、具体的な取り組みを教えてください。
麗奈店長:お客様が来店されると嬉しくて自然とコミュニケーションが生まれます。ワンちゃんたちは顔や性格がそれぞれ違うので、何度か会ううちに自然と名前も覚えてしまいます。この仕事を始めて、ワンちゃんも人間のように個性豊かで、顔つきや性格、態度が違ってくることに気づきましたし、その個性でちゃんと見分けがつけられることに驚きました。
当店では、ご来店いただいたワンちゃんをはじめとするペットやお客様との交流を大切にしています。インスタグラムにペットたちの写真を載せると、常連さんや他のお客様が「ベルエマさんのインスタに載ってる有名な鳥さんだ!」といったように、SNSを通じたコミュニティが広がっていて、通うことの楽しみを感じてくださっている方が多いです。
また、スタッフを覚えて懐いてくれる子もいて、忙しくて構えないときには飼い主さんが「今は忙しいから待ってね」と落ち着かせてくださることもあります。飼い主さんのご厚意もあってコミュニケーションが取れているので、お店はいつも明るくて楽しい雰囲気です。
当店では、食事にも気を遣っています。自分の飼っているワンちゃんがアレルギー体質なので、来てくれるワンちゃんたちにも何かあってはいけないという思いがあります。そのため、メニューにはすべての原材料を記載して、飼い主さんにも「モチモチしています」「カリカリしています」といった食感などもお伝えしてます。
鈴木社長:ワンちゃんたちも当店を覚えてくれていて、飼い主さんがワンちゃんに引っ張られて立ち寄ってくれるようなこともあります。初めて来た時は距離があったワンちゃんも、何度か来るうちに親しみを持って寄り添ってくれるようになるのが嬉しいですね。
麗奈店長:当店でカフェデビューするワンちゃんもたくさんいるんですよ。
リラックスして椅子の上でくつろいでいる子の飼い主さんから「実は今日カフェデビューなんです」と伺って、びっくりすることもありました。嬉しくて、どうしたらもっと寛いでもらえるかをどんどん追求していかなきゃと感じます。
ペットのしつけに不安を感じている方や、初めてのカフェデビューを考えている方も、ぜひ気軽にお越しください。コーヒー一杯でも大歓迎です。
鈴木社長:テイクアウトに関して、スフレパンケーキだけ萎れてしまうので難しいですが、米粉パンケーキやドリンクなど、他のメニューはテイクアウト可能になります。
お客様と関わってきて感じたことや、それを受けての今後の展望についてお聞かせください。
麗奈店長:ペットメニューに関して「このメニューのさつまいもバージョンがあったら嬉しいな」「こういうものがあったら嬉しいな」という声はいただくので、メニューに関してはお客様の声をもとに開発したり変えたりということはしていますね。
以前はワンちゃん用クッキーを提供していましたが、クッキーより蒸しパンや焼きパンが好まれていたり、アレルギーを持つペットにはミルクや小麦を使わない蒸し芋やささみを提供しています。また、夏場にはアイスが欲しいという声もあって、今年から暑さ対策として提供を始めました。やっぱりすごく暑い中来てくださるワンちゃんとかは熱中症対策で体温を下げるためにもアイスが人気だったので、お客様の要望をメニューに反映しながら、常に改善を続けていこうと思っています。
また、うちのメニューは基本的に一口サイズで、500円玉くらいの大きさのアイスが多いんです。お客様の中にはそれを数個注文してくださる方もいて、こんなに食べて大丈夫かなと心配になることもありますが、飼い主さんがペットの様子を把握していて「いつももっと食べるんです」とおっしゃることも多いです。やはりワンちゃんによって個体差があるんですね。大半の方は1個だけ注文されることが多いです。
まだ企画段階なんですが、オリジナルのワンちゃん用のお洋服も作っています。先日、あるお客様のワンちゃんにモデルになっていただき、撮影もしました。この洋服を今後ユニフォームコーナーやグッズコーナーに置けるかもしれないと計画中です。まだどうなるかは分かりませんが、少しずつ準備を進めています。
お客様から学んだことはありますか。
鈴木社長:私たちは毎日、お客様からたくさんのことを教わっています。特に、外国の方とのやり取りでは学びが多いです。例えば、コーヒーをお出ししたとき、打ち合わせ中でもお客様が必ず「ありがとうございます」と日本語や英語で感謝の言葉をくれるんです。お金を払う側なのに、お礼を言ってくれる姿勢にはいつも感動させられます。
ペットの飼い主さんに対しても、同じように学ぶことがあります。大切な命を育てるということ、その命を託される責任を私たちも感じています。飼い主さんが大切にしているペットを、まるで我が子のようにバギーに乗せたり、洋服を着せたりする光景を見ると、ペットが家族として人生にどれだけの影響を与えているかがよくわかります。
中には、ペットを亡くして「もう二度と飼いたくない」と思っていた飼い主さんも、新しい命に出会うことで再び生きがいを見つけ、輝くように人生が変わった方もいらっしゃいます。ペットも飼い主さんも共に輝いている姿を見ると、私たちも心から感動します。
自分の家でも待っているペットがいる一方で、ここでもお客様とペットが織りなす人生のドラマに触れられることが、私にとっては最高の仕事です。ペットと飼い主さんの関係がどれほど深く、そして美しいかを感じるたび、この仕事を大切にしていきたいと強く思います。
お客様とペットとの交流を大切にし、特に外国のお客様や言葉が通じない場合でもおもてなしの心を忘れずに接しています。スタッフは自分自身を振り返り、サービス向上のために定期的な自己評価を行っています。また、ペットを大切に育てているお客様から学ぶことが多く、ペットと過ごすことで人生が豊かになるという瞬間に立ち会えることに感動を覚えます。亡くなったペットとの再会や新たな命との出会いが飼い主さんに生きがいを与える様子を見守り、共に感動を共有しています。
病気や怪我などの緊急対応や、災害時の対応について伺っても良いでしょうか。
麗奈店長:先日、24時間対応で東京都23区に呼べるペットタクシーを改めて調べました。いくつか候補を控えて、お店にも情報を置いておこうということになりまして、必要があればいつでもペットタクシーが呼べるように準備を進めています。
あと、災害時のことなんですが、浅草は道が狭くて人が多いので、何かあったときにはうちが倒壊しない限り、ペットを優先的に受け入れたいねという話をしています。ただ、ペット同士でケンカしないことが前提にはなってしまうかもしれませんが、飼い主さんが管理できるように見ていただいて、一時的に道路が空くまでの受け入れといった対応にはなってしまうかもしれませんが、できる限りのサポートは考えています。
うちではペット用のお水も無償で提供しています。水道水ではなく、電解水素水を使っています。ペット用と人間用でちゃんと割合を分けて調整をしてもらっていて、医療でも使われているそうなので、ペットが飲んでも安心です。
この業界や自分たちの店を良くしていくための変化や改善点があれば教えてください。
麗奈店長:お店については、やっぱり「福祉」を大事にしていきたいなと思っています。健康と安全を追求するのはもちろん、アレルギー対応のメニューもこれからもどんどん研究していく予定です。うちは猫ちゃん、ワンちゃん、鳥さんと、いろんなペットが来てくださるので、それぞれの種類ごとに気をつけなくてはいけない点も学んでいかないといけません。ただ、ありがたいことに飼い主さんから教えてもらうことも多いんです。
例えば「この子は毛が長いからこんなふうにカットしてるよ」といったお話や、性格についてのことなど、日々飼い主さんとのコミュニケーションを通じて学んでいます。自分でも気になることは調べたり、メニューを提供する際にはアレルギーに関してチェックしたり、これはペットにとって安全かどうかをきちんと確認しながら進めていかなきゃいけないなと考えています。
あとはお店の由来にもありますが、ペットに対する認識の変化をもっと多くの人に知ってもらいたいなと思っています。様々な事情からペットを受け入れられない施設も多い中で、「私たちはこんな感じでやっています」って伝えられたら嬉しいですね。
ペットを連れたお客様が来てくれると、それを見た海外の方とか、いろんな国の人が「かわいいね」「ここはペットOKなんだね」と話しかけてくれることも多くて。触らせてもらえますか?なんてコミュニケーションが自然に生まれているのを見ると、やっぱりみんな動物が好きなんだなって感じて、そういう雰囲気が少しずつ広がっているのが嬉しいです。もっとペットに対する偏見やネガティブなイメージを払拭していけたらな、という思いで日々頑張っています。
チョークアートというのは...
鈴木社長:トイレ前の壁に少し書いてあるんですが、うちは代々塗装業をしてきたので、この黒い壁をチョークアートにしたいと思っています。実際、黒板ペイントを施していて、チョークで自由に描けるようになっています。前は白い壁だったんですが、何となく落ち着きがないと感じていました。そこで塗装業から発展した総合建築業ということもあり、壁の色を季節ごとに変えたり、光触媒でウイルス対策を施したりと、塗装には特に力を入れています。失敗してもまた塗り直せるので、チョークアートに挑戦しようと思ったんです。
麗奈店長:お客様からも「黒くなって落ち着く」「写真映えする」と好評で、ワンちゃんの写真や人の写真を撮ってくださる方も多いです。私自身、子どもの頃から落書きが大好きで、勉強は苦手だけど教科書にパラパラ漫画を描いていたような子でした。社長の提案もあり、試しにやってみたらどうかと挑戦中です。今のところ、皆さんから「いいね!」と言ってもらえて嬉しいです。調子に乗らないように気をつけつつ、次は階段にワンちゃんが駆け上がるような絵を描いてみようかと考えています。動いて見えるパラパラ漫画のようなものを描いてみたいんですが、なかなか時間がなくて、まだ進められていないんです。
初めて描いたトイレ前の壁一面のチョークアートは、初挑戦で6時間かけて描き上げました。1日時間を作れればもっと描けるんですが、その覚悟がなかなか難しい状況です。今年中には完成させたいと思って頑張っています。お客様がペットと一緒にチョークアートを背景に写真を撮ってくれることが増えて、少しずつ映えスポットとして喜ばれているのは嬉しい限りです。何とか年内完成を目指して、これからも頑張ります!
キャリアを振り返って最も大切にしてきたことはありますか。また、それをどう次世代に伝えたいですか。
鈴木社長:私はずっと建設業をしてきて、主人の代から引き継いで今3代目としてやっていますが、やっぱり一番大切にしたいのはお客様目線です。人だからとか動物だからとか、そういった枠を全部取り払って、全ての命を平等に尊重することが大事だと思っています。命は限りがあるもので、100年後には私たちも含め誰もいなくなります。だからこそ、その大切な時間をどれだけ価値のあるものにできるか、というのが私たちの最大のテーマです。
建築業に限らず、飲食に限らず、その考えを伝えていきたい。そして、私たちが提供するものが、お客様にとって幸せを感じられるものであり、全ての人がWin-Winの関係を築けるようにしたいんです。そうやって皆がハッピーになることが、私たちの大きな願いであり、次世代にもその思いを伝えていきたいなと思っています。これは私にとって永遠のテーマであり、最も大切にしていることです。
従業員の育成については店長が結構すごいんですけど、仕組み化や心構えとか、毎日意識できるようにスタッフルームに貼ってあるんですよ。
麗奈店長:私はお店で、お客様一人一人にもっと心からのサービスを提供してほしいと強く思っています。笑顔を見せましょうとか、態度を良くしましょうと口で言っても、なかなかそれが伝わらないことが多いんですよね。特に、うちには海外のお客様も来ますし、言葉が通じないことも多いので、どうやって気持ちを伝えるか、海外のお客様やペットに対してどう接するかはとても難しい課題です。
そのため、コミュニケーションやおもてなしの心をどう育てるか、書類にまとめたり、チェックリストを作ったりして、各スタッフが自分自身で評価できるようにしています。3ヶ月に1回、自己評価を行い、5点満点で自分はどう感じているかを考えてもらっています。このプロセスを通じて、自分を見つめ直す時間を持ってもらい、今の自分の働き方が果たしてどうなのかを考える機会を作っています。
もちろん、私たちからもフィードバックをしますが、働く人の人生そのものに介入するつもりはありません。ただ、ここに来てくれる人全員が笑顔になって、スタッフ自身も成長できる場を提供したいんです。定期的に勉強会も行って、単なる仕事だけではなく、みんなのライフプランを考える時間を大切にできたらと思っています。
施設情報
BELLE & EMMA 浅草
〒111-0032 東京都台東区浅草1-21-11 1F/2F 03-6807-7073 https://bandeasakusa.theshop.jp/
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